古代漢字学習ブログ @kanji_jigen

古文字(古代の漢字)の研究に関するメモ

古文字学における2つの「科学」

《古文字學導論》*1にはじまるとされる、いわゆる古文字学の近代化以降、古文字学において(主に方法論として)「科学的○○」という言葉をたまに見るようになりました。そこで、この「科学」とはなんなのでしょう(なお、このブログは古文字学を扱うブログなので、「科学とは本質的に何なのか」みたいな哲学的な話はしません)。

古文字学における「科学」について見てみると、大きく分けて二種類の「科学」があるように思います。いま、これを「グローバルな科学」と「ローカルな科学」と名付けて、それぞれ紹介したいと思います。

 

 

グローバルな科学

グローバルな科学とは、一般的(?)にいわれる「科学」です。「自然科学しか科学とは認めない」という派閥が存在する「科学」です。

「自然科学しか科学とは認めない」という派閥が存在するものの、自然科学以外の分野でも科学的手法・態度はとることができると思いますし、また完全に科学に則ることができなくてもその分野において可能な限り科学のまねごとをしたものはもはやそこにおいて「科学」と呼ばれて差し支えないものだと思われます(例えば、反証可能性がどうとか広範囲性がどうとかは多くの分野で気にかけることができるでしょうし、操作介入・対照実験やはできないけども統計的裏付けをとったり新出文物によって再現性をはかることはできるでしょう)。

 

ローカルな科学

ローカルな科学とは、古文字学における成功・失敗例から編み出された、古文字学の中で醸成された科学と呼べるものです。「科学」がいま自然科学と呼ばれる分野における成功・失敗例から編み出された概念であるため、いわばまさに古文字学の科学と言えるものであります。

それは、グローバルな科学と重なるところも多いでしょうし、より古文字学に即した具体的・実践的な内容も含まれるかもしれません(「以形為主」など)。

 

 

グローバルな科学とローカルな科学、2つの科学をうまく組み合わせていくことが重要かと思われます。

*1:唐蘭:《古文字學導論》,來薫閣書店,1935年。